AWSの新無料プランを実際に使って分かった制限と注意点
はじめに
2025年7月15日より、AWSアカウントを新規作成する際のオプションとして、これまでの無料利用枠とは異なる新しい「無料プラン」が選択できるようになりました。
このプランが従来と大きく異なる点は、クレジット制が導入されたことです。これまではサービスごとに個別の無料枠が設定されていましたが、本プランではアカウント作成時にデフォルトで100 USD分、所定の手順を踏むことでさらに100 USD分(最大計200 USD)のクレジットが付与されます。ユーザーはその範囲内であれば、AWSの各サービスを自由に組み合わせて無料で利用できます。
今回、この新しい無料プランを適用したアカウントでシステムを構築し、仕様を調査する機会がありました。本記事では、セットアップの流れや実際の利用を通じて得られた知見、注意点について解説します。
無料プランの制限について
新しい無料プランですが、AWSの全サービス・全機能を無制限に利用できるわけではない点に注意が必要です。
例えばEC2の場合、記事執筆時点(2026年2月時点)では起動できるインスタンスタイプが定められており、それ以外のタイプを選択することはできません。本プランで利用可能なのは、t3.micro / t3.small、t4g.micro / t4g.small、そして第7世代の m7i-flex.large / c7i-flex.large に限定されています。また、2025年11月からAmazon CloudFrontにおいて提供開始された「月額 0 USDプラン」を含む定額料金設定も無料プランのアカウントでは選択できず、従来通りの従量課金設定しか利用できません。
このように、本番用途で利用する環境構築を見据えた際に本来必要となるコスト最適化や柔軟な構成設定が制限される場合があります。
さらに、サポート経由で行うリソースの上限緩和申請(例:EIPの上限個数の追加)や、Amazon SESのプロダクション環境への移行(サンドボックス解除)といった手続きについても留意が必要です。これらは明確に禁止されているわけではありませんが、無料プランのアカウントからの申請という性質上、審査において許可が下りるハードルが高くなる可能性が考えられます。
以上のことから、本プランを検証や学習用途として利用する場合は特に問題はありませんが、本番運用を行うための環境を構築する場合には注意が必要です。リリース前の適切なタイミングで有料プランへのアップグレードを行い、本来稼働させるべきインスタンスタイプへの変更や、上限緩和申請、適切なインフラ設定の適用など、本番仕様に即した構成を整える必要があります。
また、無料プランは「クレジットを使い切る」もしくは「開設から6か月が経過する」と自動的にクローズされてしまうので、利用状況・期間についても適切に考えておく必要があります。本番用途で利用するのが分かっているのであれば、極力早く有料プランに移行するべきです。
200 USDクレジットの活用と注意点
2025年7月15日以降、新規にAWSアカウントを取得すれば、有料プラン・無料プランを問わず100 USDのクレジットが与えられます。そして、アカウント内のチュートリアルをこなすことで追加でさらに100 USD(合計200 USD)のクレジットを得ることが可能です。このクレジットの大きな利点は、無料プランから有料プランに移行した際でも、有効期限内であればそのまま引き継ぐことができる点にあります。この挙動については、公式のFAQにおいて以下のように明確に定義されています。
Q9.有料プランにアップグレードすると、クレジットはどうなりますか?
有料プランにアップグレードすると、残りの無料利用枠クレジットは、有効期限が切れるまで自動的に今後の AWS 請求に適用されます。無料利用枠クレジットは、アカウントを作成してから 12 か月後に有効期限が切れます。ただし、AWS 組織に参加するか、AWS Control Tower ランディングゾーンを設定して有料プランにアップグレードした場合、無料利用枠クレジットはすぐに期限切れになり、アカウントはそれ以上の AWS 無料利用枠クレジットを獲得できなくなります。 – https://aws.amazon.com/jp/free/free-tier-faqs/
リセールパートナーサービス利用時の注意点
ここで留意すべきなのが、AWSの請求代行サービスを提供するパートナー(Cloudpackやクラスメソッドなど)の利用についてです。これらのパートナーサービスに統合することは、上記のFAQにある「AWS 組織(AWS Organizations)に参加する」ことと同義とみなされます。
そのため、これらのリセールパートナーにアカウントを新規発行してもらう場合や、自身で作成したアカウントを引き渡して代行請求を行うように設定した場合、初期クレジットを得ることはできません。また、既に得ていたクレジットについても、統合した瞬間に即座に失われてしまう点に注意する必要があります。
おわりに
新しい無料プランの登場によって、「個別のサービスごとの無料枠が分かりづらい」といった問題が解消され、AWSを使い始める際のハードルはこれまでよりも低くなりました。特に最大 200 USD というクレジット額が明確である点や、無料プランから始めることで不意の料金発生を防げる点は、個人の学習やスタートアップの検証、さらには本番システムのリリースに向けた初期構築において強力な武器となります。
今回ご紹介した通り、無料プラン特有のリソース制限や、組織統合時におけるクレジット失効といった注意すべき仕様は存在します。しかし、これらをあらかじめ正しく理解しておけば、後のトラブルを回避しながら新プランの恩恵を最大限に享受できるはずです。
本記事の知見が、これからAWSアカウントを新しく作成される皆さまの一助となれば幸いです。














