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GitHub × CodeCommit – 戻ってきたリポジトリサービスを活用する

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公開日:2026/02/09

はじめに

AWSには CodeCommit というサービスがあります。これは、ソースコード管理システムである Git リポジトリを提供するマネージドサービスです。2024年7月に一度は新規利用の受付が停止され、新しいAWSアカウントでは利用できなくなりましたが、2025年11月、なんと一般提供(GA)を再開するという異例の展開を迎えました。

その一方で、CodeCommit の Web UI は、GitHubなど大手サービスと比較すると、お世辞にも使い勝手が良いとは言えません。それでもなお、私たちはこのサービスを再び選びます。 

本記事では、CodeCommit が持つ固有のメリット・デメリットを整理した上で、開発効率と資産管理を両立させる「GitHub とのハイブリッド構成」について解説します。

CodeCommit の現状と課題

CodeCommit は Git リポジトリとしての基本機能は網羅しているものの、一時期サービスの新規受付が停止されていた影響もあるのか、現代的な開発フローにおいてはいくつかの課題が残っています。

  • モダンなSSH認証への未対応: 2026年2月現在、SSH接続を利用する際は IAM ユーザーに紐づく SSH 公開鍵を登録する必要があります。しかし、現在の標準になりつつある ED25519 形式には対応しておらず、依然として古い RSA 形式を使用する必要があります。
  • 主要な GUI Git クライアントが CodeCommit を想定していない:主要なGUIクライアントはほぼ全て GitHub/GitLab/Bitbucket を前提に設計されていて、CodeCommitのSSHキーIDによるユーザー指定やAWS credential-helperという独自の認証方式への対応が不十分です。 調査してみた結果、Sourcetree や Fork では一応動かせなくはないようですが、それでも非常に設定が煩雑です。
    そのため、CodeCommit を利用する場合はほぼ CLI 環境で Git を操作できる必要があります。
  • 貧弱な Web UI とレビュー体験: コミット履歴の確認やプルリクエストといった最低限の機能は備わっているものの、GitHub 等で当たり前となっている高度なコードレビュー機能(高度な差分表示、サードパーティ連携など)は期待できません。

結論として、「コードの置き場所としては成立するが、中規模以上のチームがここを拠点に開発を回すには力不足である」というのが、記事執筆時点での著者の CodeCommit の評価です。

AWSエコシステムに「閉じる」ことで得られる価値

使い勝手の面では課題の多いCodeCommitですが、それ以上に「AWSアカウント内にリソースを完結させる」ことには、単なる利便性を超えたガバナンス上の優位性があります。

1. AWS 責任共有モデルでコードという資産を保護

AWSを利用するエンジニアにとってお馴染みの「責任共有モデル」の観点から見ると、CodeCommitの採用は非常に理にかなっています。コードをAWSの外(SaaS等)に置く場合、その可用性やデータの保護は完全に外部ベンダーの管理下に置かれます。

一方、ソースコードをCodeCommitに配置することで、コード自体も「AWSが責任を持って管理するマネージドサービス」の一部となります。AWSのマネージドサービスとして高い可用性のもとで管理される枠組みの中で資産を保護できることは、エンタープライズ領域において非常に強力なバックボーンとなります。

2. IAM による一元的な統制と監査ログの集約

AWSアカウント上の権限設定(IAM)と監査(CloudTrail)の仕組みをそのまま適用できるメリットは、運用が長くなるほど効いてきます。

  • 一貫したアクセス制御: リポジトリへのアクセス権限を、EC2やRDSの操作権限と同じIAMポリシーで管理できます。開発者ごとに「どのリポジトリにPushでき、どのデプロイを実行できるか」を一元的に制御可能です。
  • タイムラインの統合: CloudTrailを利用することで、「誰がいつリポジトリを作成し、誰がブランチを削除したか」という操作ログを、インフラの変更履歴と同じタイムライン上で追跡できます。インシデント発生時の調査において、調査対象が少なくなることは調査時負荷を下げることにつながります。

3. パートナー交代時における「ブラックボックス化」の防止

昨今の開発現場では、複数の開発会社や外部パートナーと協力するのが一般的ですが、ここに「資産管理の罠」があります。

例えば、開発会社側のGitHubアカウントやCIツールに全ての資産・設定が依存している場合、以下のような「実務上の問題」に直面するリスクがあります。

  • 環境の消失: パートナー企業との契約終了や、突然の倒産、アカウント凍結などが発生した際、稼働中のシステムはあるのに「ソースコードもビルドパイプラインも手元にない」という事態に陥ります。
  • 仕組みの属人化: 外部エンジニアの「個人アカウント」に紐付いたOAuth認証でCI/CDが動いている場合、そのエンジニアの離職とともにデプロイが不可能になるケースは珍しくありません。

CodeCommitを起点としたAWS完結型の構成にすることで、「資産(コード)と工場(CI/CDパイプライン)」の主権を、常にAWSアカウントの所有者(発注者・事業主)側に保持できます。開発ベンダーが交代したとしても、新しいパートナーは顧客のアカウントにログインするだけで、既存のコードとビルド環境をそのまま引き継ぐことが可能です。

これは単なる技術選定ではなく、「ビジネスの継続性をどう担保するか」という経営判断に近い側面を持っています。

GitHub × CodeCommit ハイブリッド構成

CodeCommitが持つ資産管理能力と、GitHubが提供する卓越したUI/UX。これらの両方のメリットを得る方法として、弊社では GitHubを開発の主軸として、CodeCommitをデプロイ・資産管理におけるデータの原本とするハイブリッド戦略を採用しています。

具体的には、以下のような運用フローを構築します。

  1. 開発のフロントエンドとしての GitHub: ソースコードのホスティング、プルリクエストによるコードレビュー、Issue管理など、日々の開発作業はすべて GitHub 上で行います。これにより、開発チームは高い生産性を維持できます。
  2. GitHub Actions による自動ミラーリング: GitHub への push(あるいは PR のマージ)をトリガーとして、GitHub Actions が CodeCommit へ「ミラーリング(全内容の同期)」を実行します。この実行のために、適切な IAM を発行して、GitHub Secrets で管理します。
  3. CodeCommit 起点の AWS ネイティブ CI/CD: AWS 側の CI/CD パイプライン(CodeBuild / CodePipeline)は、GitHub ではなく CodeCommit の変更を検知して動作するように設定します。

 

この構成を採用することで、複数のチームがメリットを得ることができます。

  • 開発チームのメリット: 慣れ親しんだ GitHub の Web UI や強力なレビュー機能、豊富なサードパーティ連携をそのまま利用できます。CodeCommit の UI や初回クローンの煩雑さにストレスを感じることはありません。
  • 運用・管理上のメリット: AWS 側のパイプラインは CodeCommit という自社管理下のリポジトリのみを参照します。たとえ GitHub との接続が一時的に遮断されたとしても、CodeCommit にあるコードを使って、AWS 内だけでビルドや緊急のデプロイを完結させることが可能です。
    前述のとおり、AWSアカウントの移管だけでコードとパイプラインをまるごと引き渡せます。

まとめ

もともと「AWS の内部に閉じる」という明確なガバナンス上の理由で CodeCommit を採用していた身として、2024 年の新規受付停止のニュースは非常に残念に感じていました。 しかし、2025 年の一般提供(GA)再開という異例の展開を経て、再び「AWS アカウント内に資産を閉じ込める」という選択肢が公に担保されたことを、一技術者として非常に心強く感じています。

私たちが技術選定を行う際、考慮すべきは「今、自分たちが開発しやすいか」だけではありません。真に優れた設計・開発体制とは、自分たちがプロジェクトを離れた後、あるいは体制が変わった後でも、サービスが健全に走り続けられる状態を担保することまで含めるべきだと考えています。

たとえ私たちの力が及ばない状況になっても、ブラックボックス化が起きず、顧客のサービスが止まらない構成を選ぶこと。それは目に見えにくい価値かもしれませんが、エンジニアが提供できる確かな価値の一つだと思います。