「会員制動画配信サイト制作のご提案にある、この法人管理機能ってなんですか?」1
※本記事は実際にあった複数の出来事や人物をNDAに抵触しないようにミックスまたはアレンジをして、ノベライズドフィクションとして再構成しています。
吉田は関西を中心に医療機関向けの経営コンサルティングをしている会社の社長だ。創業者で年齢は60歳前半、ITにはあまり詳しくないが、積極的な投資を行いながら、業界ではやり手の経営者として一定のポジションを築いてきた。この日はzoomでデジファとは三回目の会議だった。吉田が口を開いた。
「中田さん、先日ご相談差し上げたVimeoを使った会員制動画配信サイト新規構築の件ですが、会員管理機能が必要なのは当然だと思うんですが、このご提案いただいた法人管理機能って何ですか?」
「吉田社長さんがターゲットとして考えているのは、個人に近い医院の方もいらっしゃれば、大きな医療法人、病院も当然ターゲットに含まれますよね」
「勿論そうです。」
「そうなると、アカウントの使い回しのリスクを考えないとならないのです。」
「と言いますと?」
中田は会議室のホワイトボードに絵を描きながら説明を始めた。
「例えば個人医院で、院長さんだけが契約者で、動画を見て勉強するのも院長さんだけなら、ログインするアカウントーこれはIDとパスワードのセットの事をこう言うのですが-一つだけを発行してお渡しすれば済みます。しかし、これが大病院でお医者さんやスタッフ100人がセミナー動画を見る、という場合、どうされます?」
吉田はちょっと考えてから答えた。「そのアカウントを病院内で使い回して使って貰えばいんじゃないですかね?さすがに100個を個別発行するのはいちいち手間がかかりますし、それでなくてもうちのスタッフも忙しいので、出来ればそういう面倒な作業は避けたいです。」
「はい、大変ですよね、それは分かります。でも、その場合もし退職者が出たらどうします?その人は皆と同じアカウントを持ったまま外に出ていく事になりますよね。アカウントが流出してしまう事になります。」
「なるほど、確かにそうですね・・・」
「しかもこの場合非常にまずいのは、正式なアカウントを使っているため、その辞めた退職者が後で使っているかどうかを知る方法がないのです。また、ご契約いただく病院の中には、人材流動性の高い会社さんもあるでしょう。
誰かが辞めた、あるいは人事異動で部署が変わる度にいちいちそのアカウントを再発行する事になります。そうすると、作るアカウントは一つでも、それをいちいち100人に再配布する手間がかかります。
御社の場合、現状のお取引はお客様は個人医院が2割程度で、後の7割はスタッフ100名前後の中規模、残り1割が大規模病院ですよね」
吉田は全くそこは想定していなかった。なるほど、と相づちを打った。
「はい、その通りです。なので今回の新規に立ち上げる会員制動画配信サイトも、若干数字はぶれるとは思いますが、概ね似たような構成比になると思います」
中田は静かにうなずきながら答えた。「であるならば、ますますこの会員制動画配信サイトは個人一人一人に固有のアカウントを発行するべきだと思います」
中田はクライアントとの打ち合わせでよく「べき」という表現を使う。お客様のビジネス上の課題を聞いて、「だったら御社はこうすべきだと思います」と自分がお客様がするべきだと考える「べき論」を言うのが中田のポリシーだ。
「中田さん、お話は分かりました。では一体どうしたいいんでしょう?さすがに毎回こちらで何百アカウントも作るのは厳しいのですが・・・」
「出来るだけ管理しないで管理する方法を考える必要があります。」
「え、どうやってですか?」
「つまり動画配信サイトを使う社員の出し入れに応じたアカウントの発行・削除は、その契約してくれた病院の管理者にお任せするのが一番リーズナブルな管理方法です。それが先にご提案差し上げた「法人管理機能」なんです。」
「なるほど、そういうことなんですね。具体的にはどういう使い方になるんでしょう?
つまりこういう形で管理を任せてしまうのです。
ノベライズドフィクション「会員制動画配信サイト制作のご提案にある、この法人管理機能ってなんですか?」2 に続く。