menu
デジタルファームは、札幌・東京・大阪を拠点に、Web戦略の立案からシステム開発、ホームページ制作、SNS運用、運用改善まで一貫支援。Web活用によるビジネス課題解決をサポートします。

さくらのレンタルサーバ vs さくらの VPS ── WordPress を業務で運用するならどちらがよい?

シェア
ツイート
シェア
ブックマーク
タイトルとURLをコピー
さくらのレンタルサーバ vs さくらの VPS ── WordPress を業務で運用するならどちらがよい?

最終更新日:2026/08/29   公開日:2026/05/08

■この記事でわかること

  • 業務用WordPressではVPSを推奨する理由
  • レンタルサーバーで起きるメール・検証環境・ドメインの制約
  • レンタルサーバーでも問題ないケースの判断基準

はじめに

WordPress のサイトをさくらインターネットで運用するとき、「レンタルサーバ」と「VPS」のどちらを選ぶべきでしょうか?

WordPress ならレンタルサーバが定番と思われがちですが、業務で実際に運用してみると、レンタルサーバ特有の落とし穴があり、その解決のために構成が想定よりも複雑になるケースがあります。

本記事では、さくらのレンタルサーバと VPS の両方で WordPress を運用してきた経験をもとに、業務選択の立場からどちらを選ぶべきかを整理します。

結論:業務なら基本は VPS を推奨

先に結論を言うと、業務で WordPress を運用するなら、基本的には VPS を選んだほうがよい と考えています。

もちろん、レンタルサーバにもメリットはあります。しかし、以下で紹介するような落とし穴があり、その対処をしていくと、結果として構成が複雑になりやすいのです。レンタルサーバ特有の簡易化された仕組みによって、問題解決がかえって遠回りになることがあり、これを最初から折り込むよりは、最初からその問題が起こらないとわかっている VPS を利用するほうが望ましいと考えています。

ただし、レンタルサーバが特に適しているケースもあります。それは新規で一式——ドメイン・メール・Web サイト——をすべてさくらのレンタルサーバに集約して運営できる場合です。この場合は、レンタルサーバでも問題ありません。この条件については記事の後半で詳しく触れます。

なお、これは業務委託を受けてサイトを管理する立場としての回答です。立場によって答えは変わりますので、なんでも VPS がよいと言っているわけではないことにご留意ください。

レンタルサーバの落とし穴

WordPress 対応を謳っているレンタルサーバですが、業務で運用すると以下のような問題に直面します。

1. メールドメインの吸収問題

さくらのレンタルサーバは、内部にメールサーバーを持っています。ドメインをレンタルサーバに登録すると、サーバーの内部から直接メールを送信する際に、そのドメイン宛てのメールがレンタルサーバの内部メールサーバー宛てとみなされ、サーバーの外部に送信されなくなります。 

これが問題になるのは、メールを外部サービス(Google Workspace、Microsoft 365 など)で運用している場合です。 ウェブサーバーから送信されたメールがサーバー内部で「到達済」とみなされるため、メールを正常に送信しているにもかかわらず、外部サービスにメールが到達しないという問題が発生します。 

より具体的に考えてみましょう。 たとえば example.com の WordPress サイトをレンタルサーバで公開し、メールは Google Workspace を使っているとします。WordPress のお問い合わせフォームから info@example.com に通知メールを送る設定にしている場合、そのメールはレンタルサーバの内部で処理されてしまい、Google Workspace 側には届きません。

DNS の MX レコードを正しく外部に向けていても、レンタルサーバの内部処理が優先されるため、外部メールサーバーに到達しません。これは運用して初めて気づく仕様で、原因の特定にも時間がかかります。

この問題は実際の業務で発生したもので、そのときは WordPress からメールを送信する際に SMTP メールサーバーを別途登録して送信することで解決しました。しかし、SMTP メールサーバーのアカウントについては、たとえばメールサーバーの管理会社がまた別にいる場合はそことの調整が必要になったり、SendGrid などのメール送信サービスを別途契約する必要があるなど、本来ウェブサーバーには不要な追加設定を考えなければならず、構成が複雑になります。

業務サイトでは「Web はさくら、メールは Google Workspace」という構成や、「制作会社を変えて、ウェブサイトだけリニューアル」といった要件は珍しくありません。こうした組み合わせでレンタルサーバを選ぶと、メール周りのトラブルに巻き込まれるリスクがあります。

2. 開発・ステージング環境の構築に制約がある

レンタルサーバでは .htaccess が利用できることが多いですが、nginx の個別設定を適用することができません。 WordPress の運用だけなら問題なさそうに見えますが、開発・ステージング環境の構築時に差が出ます。

VPS で nginx を使えば、以下のようなことが設定ファイルだけで完結します。

  • sub_filter:レスポンス HTML 内の URL やドメイン名を動的に書き換え。ステージング環境で本番ドメインのハードコードを吸収できる。
  • proxy_redirect:リバースプロキシ経由のリダイレクト先を自動修正。WordPress の「サイト URL」設定とサーバー構成のずれを吸収できる。

WordPress は内部的にサイト URL をデータベースに持っているため、本番とステージングでドメインが異なると厄介な問題が起きがちです。よくあるのが、開発環境を開いているはずなのに、リンク先が本番環境になっていて、誤って本番環境に不可逆な操作を行ってしまうといった事故です。

しかし nginx のこれらの機能が使えると、環境差異の吸収を Web サーバー層で処理でき、開発環境構築のコストとミスオペレーションのリスクが大幅に下がります。

3. ドメイン関連の処理がやや複雑

レンタルサーバのドメイン設定はコントロールパネル経由で行いますが、マルチドメイン運用時の挙動や SSL の適用タイミングにクセがあります。

VPS であればバーチャルホストの設定ファイルを直接書けるので、何がどう設定されているかが一目でわかります。レンタルサーバでは GUI の裏側で何が起きているか見えにくく、トラブル時に手がかりが少なくなります。

既存ドメインの移行時には、DNS の切り替えとレンタルサーバ側の反映のずれも問題になりやすいポイントです。ネームサーバーをさくら指定のものにできない場合、手動で本来必要となる値を設定する必要があるため、ここも構成が複雑になる要因と言えるでしょう。

これらの落とし穴が意味すること

個々の問題はそれぞれ対処可能です。しかし、対処を重ねていくうちに、レンタルサーバの「簡単さ」を帳消しにするような複雑な構成ができあがっていきます。

メールの問題を回避するために SMTP プラグインで外部リレーを設定し、開発環境の URL 問題を吸収するために Search-Replace-DB を毎回走らせ、ドメイン設定のクセを把握するためにドキュメントを読み込む。こうした積み重ねが、本来レンタルサーバに期待していた「運用の手軽さ」を奪っていきます。

VPS であれば、これらの問題はそもそも発生しないか、発生しても自分の手でコントロールできます。最初の構築にはレンタルサーバより手間がかかるかもしれませんが、運用が始まってからの見通しの良さは VPS のほうが圧倒的に上です。

VPS で WordPress を運用するメリット

あらためて、VPS で WordPress を動かすメリットを整理します。

  • nginx が使える。 上述の sub_filter / proxy_redirect に加え、FastCGI キャッシュなど WordPress の高速化手段も豊富。ただし、最近のレンタルサーバはキャッシュ機能を提供しているものも多いため、単純な高速化であればレンタルサーバのほうが相性がよい可能性もある。 
  • メール周りを自分でコントロールできる。 外部メールサービスとの共存で問題が起きない。サーバーから直接メールを送信する場合にも、自身で DKIM 設定を行うことができる。 
  • 設定の見通しがよい。 設定ファイルが直接読めるため、トラブルシュートが速い。レンタルサーバでは制限されている問題も、OS レベルで対処できるため、対応可能な範囲が広い。将来的な構成変更にも柔軟に対応しやすい。 
  • Docker が使える。 開発環境の再現性を担保できる。

レンタルサーバでよいケース

ここまで VPS 推奨の話をしてきましたが、条件は限定的ながら、レンタルサーバが最適解になるケースもあります。

新規で一式をすべてさくらのレンタルサーバに集約できる場合です。

具体的には以下の条件をすべて満たすときです。

  • 新規にサイトを立ち上げる(既存環境からの移行ではない)
  • ドメインの DNS もさくらで管理する
  • メールもさくらのレンタルサーバで運用する
  • WordPress の標準的な使い方で完結する(リバースプロキシや複雑なステージング構成は不要)

この条件であれば、前述の落とし穴はいずれも回避できます。ワンクリックインストール、自動 SSL、バックアップ&ステージング機能をフル活用でき、月額 500 円〜(スタンダードプラン)というコスパの良さも享受できます。さくらが用意したレールの上を走る限りは、レンタルサーバは非常に快適です。

ただし、ウェブ制作業務の場合は新規作成よりも既存サイトのリニューアルのほうが多い印象があり、この条件をすべて満たせるケースは限られるのではないかと感じています。

まとめ

WordPress サイトを業務で運用するなら、レンタルサーバと VPS のどちらがよいかを、実経験を交えて考察しました。

業務委託を受けてサイトを管理する弊社の立場としては、基本は VPS を選ぶことを推奨しています。レンタルサーバにも「簡単さ」「安さ」というメリットはありますが、この記事で挙げたような落とし穴が、逆に構成を複雑にして管理しづらくなると感じているためです。

一方、新規でドメイン・メール・Web のすべてをさくらのレンタルサーバに寄せられるなら、レンタルサーバも十分な選択肢です。

判断の軸は「自分の運用が、さくらのレンタルサーバが想定するレールに収まるかどうか」。収まるならレンタルサーバ、少しでもはみ出すなら VPS。迷ったら VPS を選んでおくほうが、後からの手戻りは少なくなると考えています。

以上が、弊社の立場からの結論です。インフラ選択時の参考になれば幸いです。

 

CONTACT

\気の利いたシステム開発会社に依頼したい/
大手と違って、一件一件のお客様のお仕事と真剣に、全力で向き合っています。
ご相談・お問い合わせする