熊本地震によるアクセス集中にどう対応したのか ― サーバーの増減で支える災害時の情報発信
- 熊本地震によるアクセス集中時に、Webサイトで何が起きたのか
- AWS Auto Scalingの最低台数・上限台数を変更した理由
- 災害とアクセス状況に応じて、安定運用とコストを両立する考え方
地震が発生すると、震源地や被害状況、交通機関の運行情報などを確認するため、多くの人がニュースサイトにアクセスします。地域の情報を伝えるメディアにとって、必要な情報を必要なときに届けられることは、非常に重要です。
一方、短時間にアクセスが集中すると、普段は問題なく動いているWebサイトでも、表示が遅くなったり、ページが開かなくなったりすることがあります。
今回は、当社が保守運用をお預かりしている九州のお客様のWebサイトで、2026年7月28日16時27分ごろに熊本県熊本地方で発生した地震に伴い、アクセスが集中した際の対応事例をご紹介します。
当社では、お客様のWebサイトを安定して運用するため、アクセス状況を確認しながらサーバーの台数設定を変更しました。
アクセス集中への備えは「お店のレジ」に似ている
Webサイトのサーバーは、お店のレジに例えると分かりやすいかもしれません。
お客様が少ない時間は少ないレジでも対応できますが、来店が集中すると、会計を待つ長い列ができます。Webサイトでも、アクセスが一度に押し寄せると、サーバーの処理が追いつかなくなることがあります。
そこで、複数のサーバーに処理を振り分け、一台に負担が集中しないようにします。これが「負荷分散」です。
当社が保守運用をお預かりしている今回のWebサイトでは、AWSというクラウドサービスの「Auto Scaling(オートスケーリング)」を利用しています。
Auto Scalingは、あらかじめ設定した条件に応じてサーバーの台数を増減させる仕組みです。このWebサイトでは、通常時の設定を最低2台、上限8台としていました。
レジに例えれば、「少なくとも2台を開けておき、混雑に応じて最大8台まで増やせる」という状態です。
2026年7月28日16時27分ごろ:アクセス集中を受け、最低台数と上限を引き上げ
2026年7月28日16時27分15.2秒、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、最大震度7を観測しました。
地震の発生後、当社が保守運用をお預かりしているお客様のWebサイトにアクセスが集中し、ページが表示されない状況が発生しました。
当社では保守運用対応の一環として、サーバーの設定を「最低2台・上限8台」から「最低6台・上限12台」へ変更しました。
ここでのポイントは、増やせる上限だけでなく、最低限動かしておく台数も引き上げたことです。
上限の引き上げは、さらなる混雑に対応できる余地を広げるためです。一方、最低台数の引き上げには、あらかじめ多くのサーバーを稼働させ、急なアクセスに備える目的があります。
お店でいえば、「混んだらレジを増やす」だけでなく、「混雑が続く間は、最初から多めのレジを開けておく」という対応です。
2026年8月4日:アクセスの減少に合わせ、通常の設定へ
その後、お客様のWebサイトへのアクセスが減少したことを確認し、2026年8月4日にサーバーを「最低2台・上限8台」の通常設定へ戻しました。
サーバーを多く稼働させるほど、その分の利用料金もかかります。緊急時の体制を維持し続けるのではなく、アクセス状況に応じて設定を見直すことで、安定した情報提供と運用コストの両立を図ります。
通常設定に戻しても、サーバーを2台に固定するわけではありません。設定した条件に応じて、上限の8台まで自動的に増やせる状態は維持しています。
2026年8月6日7時59分ごろ:再び地震が発生し、体制を再強化
2026年8月6日7時59分25.3秒、熊本県天草・芦北地方を震源とするマグニチュード5.1の地震が発生し、最大震度4を観測しました。
当社では、再びお客様のWebサイトへのアクセスが集中する可能性を考慮し、サーバーの設定を再度「最低6台・上限12台」へ変更しました。
一連の対応をまとめると、次のようになります。
| 時期 | 状況 | 最低台数 | 上限台数 |
|---|---|---|---|
| 通常時 | 平常時の運用 | 2台 | 8台 |
| 2026年7月28日16時27分ごろ | 熊本県熊本地方で地震発生。アクセス集中を受けて設定変更 | 6台 | 12台 |
| 2026年8月4日 | アクセス減少を確認し、通常設定へ復帰 | 2台 | 8台 |
| 2026年8月6日7時59分ごろ | 熊本県天草・芦北地方で地震発生。アクセス集中に備えて設定を再強化 | 6台 | 12台 |
※地震の発生時刻は、気象庁が公表している震源時刻です。サーバー設定を変更した時刻を示すものではありません。
※表に記載した台数はサーバーの設定値です。実際に稼働した台数や、期間中の最大稼働台数を示すものではありません。
「自動で増える仕組み」があっても、運用判断は必要
Auto Scalingは便利な仕組みですが、無制限にサーバーを増やすものではありません。あらかじめ設定した台数の範囲や条件に沿って動作します。また、新しいサーバーが起動し、処理を受け持てるようになるまでには、3~5分程度の準備時間が必要です。その間、サイトが表示されない状態となります。
そのため、急激なアクセス集中が想定される場面では、自動増減に任せるだけでなく、あらかじめ稼働させる最低台数や、増やすことのできる上限台数を見直すことが有効です。
今回も当社では、お客様のWebサイトのアクセス状況と地震の発生状況を踏まえ、サーバーの設定を段階的に変更しました。
なお、サイトが表示されなくなる原因は、サーバーの台数不足だけとは限りません。データベースなど、別の部分に負荷が集中する場合もあるため、状況に応じた確認が欠かせません。
必要なときに情報を届けるために
Webサイトは、公開して終わりではありません。特に地域の情報を発信するメディアでは、災害などによって利用状況が大きく変わります。
今回の対応では、当社が保守運用をお預かりしている九州のお客様のWebサイトについて、地震発生後のアクセス集中を受けてサーバーの体制を強化しました。
その後、アクセスが落ち着いた段階で通常設定に戻し、再び地震が発生した際には、アクセス集中の可能性を考慮してサーバーの体制を改めて強化しています。
このように、アクセス状況や周辺の状況に応じてサーバーの設定を柔軟に見直すことで、お客様による安定した情報発信を支えながら、平常時の運用コストを適切に保つことができます。
デジタルファームでは、サイトやシステムの制作・開発に加え、公開後の保守運用にも対応しています。アクセス集中への備えや、現在のサーバー構成・運用方法に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。


